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長寿日本一の食習慣にふれた野沢温泉
宿舎は野沢温泉病院の片桐知雄院長が経営する野沢温泉ホテル。ホテルの同じ敷地内にある病院では整形外科医の院長と息子さんが温泉治療を取り入れた診察、治療に当っている。
野沢温泉の魅力の1つに、どのホテルや旅館に泊まってもそれぞれが個性的で工夫が凝らされていること。温泉ホテルの建物は、外壁は打ちっぱなしのコンクリートで、ロビーや食事室は洋風なのだが客室は純和風。温泉は木の枕が横たわる寝湯が備わった内風呂と露天の岩風呂。露天風呂には高塀越しに鬱蒼とした山肌が迫っていた。
地域医療にも尽くしている片桐院長に長寿の秘訣を聞いてみた。 「野沢は自然、空気、水、温泉がいいこと。それに土地の産物が主役であるのは当然として、全般に旬の食材を中心とした粗食であったこと。それに農作業による体の鍛え方が体脂肪を少なくし、筋肉質の人が多いのが特徴です。さらに、他所の人と比べて顕著なのは腰の強さが違うことなのです」と、食事、運動などのバランスの良さを挙げておられた。もちろん野沢は長野県内でも老人医療費はかなり低いという。 。 朝風呂は、村内に13ある外湯のひとつ「大湯」で一風呂浴びることに。野沢の湯は熱いのが特徴。浴槽は熱めと温めに仕切られてはいる。ところが地元の人が悠然と浸かっているのは熱いほう。手をそっと入れてためらっていると、 「いやあ、まず温いほうに入って体を慣らしておいて、さっと入ると平気ですよ」と声がかかった。しかし、足首だけで御免被り、温めのお湯に浸かることになった。宿の温泉にゆったり浸かるのもいいが、地元の人と話しながら一緒に入る湯はまた格別。野沢の外湯には「熊の手洗湯」のように、源泉温度42℃と温いお湯もあるなど選択肢は多い。
朝食後は、野沢菜発祥の「寺種」で知られる健命寺からブナ林の遊歩道を散策。野沢菜の湯洗い場でもある100℃近い熱湯の「麻釜」へ下りる。 11月の収穫シーズンには、この麻釜のほか外湯も昼間は野沢菜の洗い場に変わるとか。 麻釜の前の「村のホテル住吉屋」に立ち寄ってみた。旅ペンの会友で女将の河野嘉子さんと暫し懇談。郷土料理をベースとした名物の大鉢料理を工夫してこられた方だ。「お茶請けにでも」と「芋なます」と「塩煮芋」を出してくださった。芋なますはじゃが芋をマッチ棒のように細切りにして水に晒し、甘酢で和えたもの。「野沢の水が作る酢の物です。甘さを強くしないと酢が利かないのです」と女将。生芋の生臭さが全くない。 塩煮芋は本来ならば捨て去るような皮つきの小さなじゃが芋を塩だけで煮たもの。最近では少量の醤油や味醂などで味付けするようになったそうだが、まさに素材の味が生かされた逸品だ。 話がはずみ、更に、出始めたばかりの「ムセッタ(ブナハリタケ)」の煮付けが登場。ブナ林を吹き渡る風のような香りが口いっぱいに広がる。「ちょっとおにぎりにしてみましょうか」と女将。野沢の高原米と山の幸が合体した、野沢の、しかもその時季にしか体験できないスローフードそのものの味わいであった
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