あなたにとってどんな素晴らしいアイディアがあっても、
それを適切に伝える「話力」がないとその能力は生かされません。
 (13)「話を引き出すには」

 「話力」というと一方的に話す能力をと思いがちですが、実は、相手から「話を引き出す」というのもとても重要な話力なのです。「話し上手は聞き上手」に加えて、訊きだすだすための方策を会得すること。それが大きな武器となります。    

 内容が豊な人なのに口の重い人から話を引き出すのは並の苦労ではありません。そこで大事なのが、相手のことをできるだけ詳しく調べておくこと。相手が作家や画家などの場合は、その作品にもふれておく。その人のことをよく知っている人を通して、その「人となり」などを聞いておきます。中でも、その人が特に興味を持っている事や、得意とする分野を把握しておくことがポイントです。  

 人間には自分の得意な分野やちょっと自慢したいものが必ずあるものです。ですから本題とは関係なくてもいいから、その人が最も答えやすいことから聞いてみるのです。  どんなに口の重い人でも、一度口を開いたらこっちのものです。あとはさりげなく本題に入っていけばいいのです。

(14)「長い話を切るコツ」

 口の重い人を懐柔するのも大変ですが、逆に長広舌の人を黙らせるというのも実は、重要な話力のうちなのです。お構いなく喋りまくる相手のペースをいかに断ち切るか、そのコツを覚えておきましょう。  

 プロのアナウンサーの仕事のうち難しいものの1つに「インタビュー」が挙げられます。その中でも最も苦労するのが口の重い人に接する時です。特に相手がお相撲さんや高校球児の場合がそうでした。しかし最近はだいぶ様変わりして、お相撲さんはともかく高校生に至っては、どう話せば聞く人に受けるかを計算したうえでスピーチをするようになりました。近頃はむしろ長い話をどう切るかに神経を使うことが多くなっています。

 その第一は、相手が話すであろう内容を予め調べておくこと。インタビューの基本は「できるだけ短い質問で相手の話を引き出すこと」なのですが、この場合だけは特別です。相手が言わんとする内容を述べて、相手が「ハイ」とか「そうです」としか言えないようにもっていくのです。それに、あなたの目線もものを言います。じいっと見つめていた目線をふとそらすと、相手は一瞬黙るものです。これはちょっとした高等戦術ではありますが練習してみてください。

 
(15)「対話の場合の位置関係」

 相手をリラックスさせて話を引き出すのが真の話し上手なのですが、その時の相対する位置関係が大きくものを言います。

 例えば、2人で話す時、最も目と目が合いやすいのは正面で向き合う時です。小さな卓で向き合う椅子2つというのがその典型です。できれば4人がけの卓にし、自分の右前方に相手がくる位置関係を保つのが人間の生理にもかなっているのです。ですから、立ったまま話す場合は、正面から向き合うのではなく、左へ一歩ずらしてみてください。 また、相対する時の距離も大事です。室内で話す時、最もふさわしい距離は1、5メートルから3メートルと言われています。離れても近すぎてもことばのセンテンスが短くなり、込み入った話はできません。

 ところが、車の後部座席に3人がけしている時は長時間に亘っても話せます。これは、お互いの目と目が合わないのとスキンシップが効果を大にしているからなのです。居酒屋で飲む場合も卓よりカウンターのほうが打ちとけ安いのも同じ理由だと思います。

                                      朝日新聞掲載より            
 
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